「好きなものを仕事にする」は「好きなもの=仕事」というわけではない
先日、ある優秀な事務職の方からお話を聞くことが出来ました。
その女性は一流大学を卒業し、そのまま一部上場企業に入社して総合職のキャリアが約束されている人でしたが、入社4年後に退職してホットケーキ屋を始めたのです。
しかしまったくお客さんが集まらず、開業2年目で挫折。
また事務職に戻って、今も会社員として働いています。
「好きなものを仕事にする」は「好きなもの=仕事」ではない
ホットケーキ屋としての独立開業は、誰かにそそのかされて始めてしまったわけでははありません。
「自分の好きなものを仕事にする」という話を彼女なりに解釈した結果、一流企業の総合職でのキャリアよりもお店を開いて一から築き上げるという道が自分の生き方だと考え、思い切った行動に出たのです。
「自分の好きなものを仕事にする」という話は、決して悪い話ではありません。
むしろ転職活動で判断に迷った時などは、最終的には自分が好きかどうかで決めるのもいいと思います。
しかし「好きなものを仕事にする」ということを「一番の趣味をそのまま自分の職業にする」という意味でとらえてしまうと、どうも上手くいかない場合が多いようです。
もしホットケーキ屋というビジネスそのものに興味があるのであれば、ホットケーキ屋を開業する決断は正解だったと言えるでしょうし、多少の失敗はあっても、何らかの成功にたどり着いた可能性はあったと思います。
しかし「ホットケーキが好き」という意味が、自分でホットケーキを作ることであったり、いろいろなホットケーキを食べ歩くことなのであれば、必ずしもホットケーキ屋を開業して成功することにはつながらないでしょう。
こう考えていくと、好きなものを仕事にするというのは「好きなもの=仕事」という意味ではないことが分かります。
好きなものがどんなビジネスとして世の中に受け入れられているのかを理解し、それを自分で実行できるようになる、ということだと理解することが第一歩になるのです。
転職活動でも同じ発想で
これは独立開業をする場合だけではありません。キャリア替えのために別の会社へ転職する場合でも、同じ考え方が必要です。
今の職種・業種ではなく別の世界で働きたいと考えている人の多くは、自分の本当に好きなことは何か、というところから検討し始めています。
それは正しいスタート地点です。
しかし、パンケーキ屋開業の例と同じく、旅行が好きだから旅行代理店に転職したいとか、パソコンが好きだから家電量販店に転職したいなど考えていると、本当の意味での「好きなことを仕事にする」にはならない可能性があります。
せっかく好きなことがハッキリしているのですから、それがどんなビジネスとして世の中に存在しているのか、それに自分はどうかかわることが出来るのか、という視点で見直し、もう少し考えを深めて行ってほしいと思います。
履歴書を書き始め、人材紹介会社に登録するのはその後でも遅くはないのです。