「みんながリッチになるはずだ」 ジョン・J・ラスコブとは?
ニューヨークにあるエンパイア・ステート・ビルディングは、1931年に完成し、1972年にワールド・トレード・センター・ビルが建てられるまで、世界一の高さを誇るビルでした。
このビルが完成するまでは、クライスラー・ビルが世界一の高さを誇っていましたが、それに対抗するため、あるビジネスマンがこのエンパイア・ステート・ビルの建設に熱意を示したと言われています。
そのビジネスマンとはジョン・J・ラスコブと呼ばれる人物でした。
【ジョン・ラスコブという人物】
ジョン・ラスコブは、化学会社「デュ・ポン」に秘書として採用され、その後財務を担当するようになりました。
さらにこのデュ・ポンが自動車会社「ゼネラル・モーターズ」の43%を所有する株主になった時に、財務を取り仕切ったのもラスコブでした。
その後ゼネラル・モーターズ(GM)の財務も兼務で担当することになったラスコブは、クルマの購入者が分割払いで買えるような販売形式を可能にしました。
またグループ会社内の部門別実績を、財務係数を使って業績を評価する方法を採用したのもラスコブでした。
【「みんながリッチになるはずだ」】
ラスコブは1920年代の株式市場で、とても活発に売り買いをしていたといわれています。
1929年、彼はあるインタビューで、「どんな人でも毎月15ドルずつ株を購入してゆけば、必ず金持ちになれる」という趣旨の話をし、これは「Everybody Ought to Be Rich(本当ならみんながリッチになるはずだ)」というタイトルの記事として雑誌に掲載されました。
これはとても反響を呼びましたが、その2か月後、ウォール・ストリートの大暴落が起こり、世界恐慌が始まるのです。
一部では、「ラスコブは上がり続ける株価に浮かれ、調子に乗ってこのようなことをしゃべったのだ。事実、直後に株価は暴落し、リッチどころではなくなったじゃないか」という声があがりました。
しかし、ラスコブの本当のメッセージは15ドルで株を買うということではなかっただろう、という意見が現在では主流になっているようです。
彼は同じインタビューの中で「投資から得られる収益が、自分とその家族を快適に養うことができれば、その人はリッチであると言えるだろう」と述べています。
彼が本当に言いたかったことは、「rich」になるためには億万長者である必要はない、持っている投資による稼ぎで十分に食べていければ、その人は十分に豊かなはずだ、ということでした。
そして、そのためには雇われて働き続けるのではなく、株式投資を行ってrichになることをみんなが考えてゆかなければいけない。
今でいう「アーリー・リタイヤ」のような発想と考えられます。
いつの時代でも、財務に長けた人物は「お金に働かせる」ことを考えるのです。