ジョン・テンプルトンの投資哲学

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【ポジティブ思考】
ジョン・テンプルトンの投資家としての最大の「武器」はポジティブ思考でした。

特に、ほとんどの投資家が市場の状況に悲観的になっているとき、彼の「ポジティブ思考」という武器はとても強い役割を果たしたのです。


彼は市場がもっとも悲観的な状況のときに株式を買うことの意義を信じていました。

第二次世界大戦が始まった頃、テンプルトンは資金を借り入れ、アメリカの100社以上の株式を購入しました。

このうち破綻したのは4社のみで、ほかの投資では大きな利益を上げたのです。


ほかの投資家が売りに入っているとき自分は買いに入る、という姿勢は「ほかの人がしていることと逆のことをする以外に投資家として成功する道はない」という彼の信念の表れです。

投資家たちはいつも「安く買う」ことを勧められますが、もしこれを実行しさえすれば、あなたは自動的にほかの大勢の人たちとは逆のことをすることになります。

つまり、株価はほかのものと同じく、買う人が少なければ需要が低くなり、結果として安くなるのです。


【ほかの投資家とは逆のことをする】
1937年にウォール街で投資家としてスタートしたテンプルトンは、その長いキャリアを通して、つねに孤独な道を歩み、自分のファンドに大きな富をもたらしてきました。


彼は戦後日本の奇跡的な経済復興の可能性を見抜いた最初の西洋人でした。

1960年代に彼が最初に日本に投資をしたとき、日本は事実上の新興国であり、その経済面での活躍はまだ株式市場に反映されていませんでした。

徐々に世界中の人たちが日本で起こりつつあることに目を覚まし始め、株式市場はどんどん大きくなってゆきました。


しかし、テンプルトンはさらに一歩先を見ていました。

1989年に日本のバブル市場がピークを迎えた頃には、彼は資金のほとんどを日本から引き上げており、日本に残っていたのは彼の資産の3%のみでした。

次はアメリカ市場が回復すると見込んで、資金の多くをアメリカ市場につぎ込んでいたのです。

1990年代、テンプルトンは市場が45%の上昇を見せていたときに、自分の投資で75%のリターンを実現しました。


また1990年代後半のITバブルのときも、ほかの投資家たちの行動とは逆の投資を行いました。

多くの投資家が資金をつぎ込んでいた「テクノロジー」「メディア」「テレコム」といった業種の株にはまったく手を出さず、安定した商品先物取引に投資をしていたのです。


そしてアジア経済が回復してきたとき、この投資は功を奏しました。

 

テンプルトン卿の流儀 (ウィザードブックシリーズ)


【質の高い会社を探す】
しかし、彼は単に世界経済の大きな流れをつかむことだけに長けていたわけではありません。

彼はまた個々の企業についても優れた選択力を持っていました。

究極的には、個々の企業の株式がマーケットの動向を決めているのだ。その逆は成り立たない」と彼は語っています。

市場の動向や経済の動きに注目する投資家が多すぎるが、ベアマーケットでも企業の株が上昇することもあるし、ブルマーケットで下落する株だってありうるのだ」。


では彼はどのように投資先を選んでいたのでしょうか?

彼がいつも唱えていたことは「株式を買うときは、質の高い企業の株で値が下がっているものを探せ」ということでした。


1993年、彼は自分で確立した投資のルールをまとめ、発表しました。

これは今日でも大変役立つものです。


質の高い会社はさまざまな形であらわれてくる。成長市場ではセールスリーダーとしてあらわれ、技術革新によって左右される業種では研究開発のリーダーとしてあらわれるものだ


質の高い会社は経験豊かな経営陣に率いられている


“質の高い”とは、しっかりとした資金基盤のある会社で、新しい市場に一番乗りで登場してくる会社である


“質が高い”とは、高い利益率を誇っている商品によって得られている信頼のことである


投資する前に調査せよ。何が企業を成功に導くのかを研究しなさい


テンプルトンは「買ったらそのまま持ち続ける」というやり方については信用していませんでした。

変化のスピードと言うのは、とても重要で見過ごすことはできないものだ」と述べています。

変化を予期し、変化に対応してゆかねばならない」。

そして自分の投資対象を「積極的に」チェックすることを推奨しています。


テンプルトンは敬虔なクリスチャンとしても知られていました。

彼のポジティブ思考は「ビジネスの成功は人道的にも貢献するものだ」という彼の信念にも表れていました。

競争力のある事業と言うのは、人類が作り出したどんなものよりも、貧しい人たちを豊かにするものだ。もしその事業に倫理性がないようであれば、今すぐではなくても、いずれその事業は破綻するだろう」と彼は語っています。

 

人生を開花させる秘密のプラン―伝説の投資家テンプルトンからの贈り物


How to invest like ... Sir John Templeton (The Daily Telegraph)